第13回ウディコンに参加したので開発記をざっくり書く
前書き
第13回ウディコンに「やかまシルフのヒァナ」で参加していました。
(2021/08/22追記)総合7位、熱中2位、斬新3位、遊びやすさ5位という極めて良い順位を頂きました。これだけ多くの人に投票して頂けたというのは有り難いことです。また、お気に入りのゲームとして挙げてくださった方も多く見受けられます。嬉しいことです。感謝しております。
遊んでくださった方は、ありがとうございました。
まだ遊んでいない方も、投票はできませんが今からでも遅くないので、遊んで頂けると幸いです。
近いうちに、めちゃくちゃ長いエキストラステージを搭載するアップデートを行おうと思います。ですので、そのときに遊んで頂くのも良いと思われます。
また、最新版では「ノーダメージクリア」や「ノーセーブクリア」にもチャレンジできるようにしてあります。戦術性やボリュームも増していますし、ヒァナの表情も豊かになりました。RTA的な楽しみ方にも耐えうるようですので、もしよろしければ、周回プレイにもトライしてみてください。
この記事では、ゲームというものを作成してみて思ったことや、苦労話、細々とした感想などを書き連ねていきます。
マジシャンは幻想を守るため、種明かしをあまりしないものと聞き及んでいますが……私は素人ですし、マジシャンにはなれそうにありませんね。
ある日の思いつき
ある日突然「ノンフィールドローグライクを作りたい」と思いました。
twilogによると今年の2/17だそうです。諸事情で大きく時間が空いたため、この機会にゲームを作ろうと考えました。幼稚園の頃から憧れていたゲーム制作というものを、一生に一度ぐらいはやっておきたい、そう思ったはずです。
具体的には、私が信仰しているゲームの一つに「ACDC」というものがあり、それのフォロワー的なゲームを出そうと思いました。また、裏白蛇などのRTAの動画が好きなので、「RTAしたときに映えるローグライクがいいな」と思いました。昔みた「雀鬼流」の動画なんかが念頭にあったはずです。
この時点では、「そうは言っても3日ぐらいでエターなるだろう」と思っていました。実際、開発につながる行動は一切取らないままあっさり3ヶ月ほどが過ぎました。
ウディコン投下を目指す
しかしその間、「ゲームを制作したい」という気持ちは何と衰えることがなかったのです。風呂の中で、道ばたで、ヒマさえあれば面白いノンフィールドのルールを考えていました。これには自分でも驚きました。
仕方がないので、本格的にアイデア帳(という名のscrapbox)を出して、ゲームのルールを考えるようになりました。今からおよそ3ヶ月前です。それと並行して、5月の末ぐらいにウディタをダウンロードして、自作システムの制作方法を学び始めました。
締め切りを設けるのは重要ですので、どうせ2ヶ月後にウディコンがあるならそこに提出しようと思いました。
ウディコンにした理由はいくつかあります。
最大なのは、過去のウディコンの作品群が好きだからでしょう。
主に、私が敬愛する雪子先生(何とお呼びすればいいのか最早よくわからないが)の出してたコンテストというのが大きかったです。
私が遊んでたのはちょっと前になっちゃうのですが、「Gravity」に始まり、「決闘科」「ロードライトフェイス」「キャンディリミット」「SecreTalk」「ウルファールのサンプルゲーム(仮)」「いばらのうみ」「なれる?NE」「メツァルナ」「道の先はみえない/創造」なんかが好きでした。
先に名前が出ましたが、「ロードライト・フェイス」や「いばらのうみ」「ゲー製ゲーム」など、過去にノンフィールドローグライクが評価された土壌があるのも理由の一つに挙げられるでしょう。
さらに、初作品における最大のハードルである「宣伝からダウンロードまで」を容易に超えられるのが素晴らしいです。
そんなわけで、私はウディコン提出を目指し、ゲームアイデアを考え始めました。
最大の難所、ルールデザイン
意外にも、最初に行ったアイデア出し、つまりルールデザインが、全開発工程中で最も困難でした。
一ヶ月ほどの間、なーんにも進捗のない状態が続きました。ルールのアイデアを考えては、思考実験段階でボツにする日々でした。ここが一番辛く、効率も悪く、これに比べれば他の期間は、とにかく何か進捗が生まれているだけマシでした。
(初期は現在とは全く違い、電脳空間を軽量化を繰り返しながら一方向に飛び回るアリスのゲームでした。そう、ウディコン参加作のAlice in Another Worldと設定が非常に似通っているのです。ジャンルこそ違えど、この作品が出てきたときにはびっくりしました。)
ルールデザインをもっと早く切り上げれば、開発期間も取れましたし、今回のように大規模な投票期間中のアップデートを行う必要もなかったでしょう。
しかし、私がゲームを選ぶ基準として、非常に大きいのが「斬新さ」でした。そう、ウディコンの評価項目のアレです。特に、私がウディコンやフリーゲームに何を求めていたかというと、新たなゲーム上のアイデアです。だから、「斬新さ」を妥協するくらいなら、自分で作る意味はないと思っていました。
ボードゲームのデザイナーという職種を尊敬した瞬間であります。今までは楽しそうな人たちだなーとぼんやり思ってたのですが、「絶対にボードゲームデザイナーにはならないぞ」と固く決意したものです。
この段階で、過去に遊んだノンフィールドRPGを思い返して整理し、いくつかは追加で遊んで参考にしました。(なお、このとき「ハイテンダンジョンRTA」に理想を見出してしまったので、RTA特化路線はこの時点で放棄することになりました。)
遅々としたアイデアの積み重ねや、ありがたい友人との議論の後、ようやく実際に現在の「マナの取り合い」というアイデアを得たのが6月末でした。そこからウディタを用いた開発が始まりました。アイデアを得るのに4ヶ月ほどかかり、その後は提出まで約4週間、投票期間のアプデ開発を含めると7週間です。ルールデザイン段階がいかに難産だったかわかろうというものです。
ゲーム実開発段階の苦労
そんなわけで、ゲーム規模に比して開発期間は圧倒的に不足していました。このことは最初からわかっているわけです。そこで、開発の目標は「とにかくクオリティは何でもいいから、通しで遊べる完成品をウディコンに投稿する」ことにおかれました。
ゲーム開発を始めて驚いたのは、とにかく様々なタイプの作業を、パッパッと切り替えて行わなければならないことでした。
私は絵がほぼ描けず、デザインの経験もないため、UIデザインが最も困難でした。
UIは作って表示してみないと印象や効果がわからないため、試作品のボツが多くなり、極めて手間がかかりました。
何もノウハウがないため、過去のノンフィールドRPGのデザインをいろいろ模倣しました。
親切な友人に、様々な方法論や素材の探し方などを教わることで、何とか乗り切ることができましたが、さもなければ開発は間に合わなかったと思われます。
タイトルロゴ作成も全然よくわかりませんでした。ロゴが大量に載っているサイトを見つつ、お友達のクリスタ配信を見よう見まねし、最後はフォントの力に頼りました。
エフェクトをつけるのに時間がめちゃくちゃかかるのも、想定外でした。
大量にあるエフェクトの素材を一つ一つ検分し、サウンドも同様に探し、両者をフレーム単位で合わせる必要がありました。細かい微調整の度にゲームの再起動が挟まるため、1つエフェクトをつけるのに30分~1時間ほどがかかり、私は仰天しました。
提出
他のことはもうあまり覚えていないのですが、どうにか時間内に最後まで遊べる状態で提出できたので、私はもう非常に満足しました。
当初の「なんか提出する」という目標を達成したので、打ち上げとしてうまい肉を食べに行きました。めちゃくちゃおいしかったです。
目標は達成されたので、もはや順位はどうでもいい……というほどではありませんが、あまり欲はありませんでした。これは今でも変わっていません。開発期間が不足しているゲームでもありますし、ローグライクというジャンルは難しく人を選びますから、まあ、半分より上の順位が発表される圏内に入れば、バンバンザイの大勝利だと思っております。
テストプレイヘタクソマン
開発期間も、投票期間にも、とにかく酷いバグが大量に出ました。
バグに我慢してプレイしてくださった方々には頭が上がりません。
通常のプログラミングと違い、ゲームというプログラムにおける特殊処理の多さからとにかくバグが出やすかったです。またエフェクトの長さなどから、包括的なデバッグやテストプレイが難しい実行環境だと思いました。とにかく効率が上がりませんでした。
「デバッグおよびテストプレイ」という、全く意識していなかった開発工程が、私の最大の弱点だったと言ってよいでしょう。UI開発はどうにかでっち上げられても、デバッグ力はどうにもなりませんでした。今でもどうすればいいのか、よくわかっていません。
非常に残念ではありますが、初ゲーム開発ということで、このデバッグ力が私の現在の実力なのだと考えています。今後開発することがあれば、いかにデバッグとテストを効率よく行うかが目標となるでしょう。
好意的な感想が多かった
まず、相当数のダウンロードがあったことに驚きました。これは紛れもなくウディコンという場の力です。
自分の制作物に自信がなかったのと、あまり普遍的なジャンルだとは思っていなかったため、エゴサは恐る恐るでした。しかし、流れてくる感想を見ると、予想以上に受け入れられていることがわかり、びっくりしました。有り難いことです。
自分の作品がダウンロードされている!しかも開始1分でごみ箱ダンクされることなく、あまつさえクリア報告まである!という状態に私は酔い痴れました。
ただただ「爽快なノンフィールドローグライクがやりたい!」という己の欲望に従って作ったゲームが、これだけの人にすんなり受け入れられたことに仰天しました。まさかですが、私はゲーム制作に向いているではないでしょうか?そうに違いありませんでした。
ウディコンという土壌もよかったのでしょう。私の認識では、ウディコンには新奇性を求める気風があり、一方で「評価」という名目上、クオリティの低い項目があったからといって即ごみ箱行きになることは少ないです。これらの特徴は、今回の作品には有利に働いたはずです。
ボリューム不足との戦い
別な意味で驚いたのは、「ボリュームが少ない」という意見がおよそ半数以上を占めていたことです。
やかまシルフは変わったルールのゲームですので、3分で「何これ、よくわかんない」「私には合わない」とごみ箱行きになるリスクがありました。
また、マナの奪い合いという目新しさを売りにしているゲームでして、物語や戦術性による牽引力には欠けていると思いました。ローグライクを模しているにも関わらず、「何のマナが来るかに行動が依存する運ゲー」という根本的な戦術性の低さから逃れられないわけです。
よく喋るシルフやエーテルマナという変化を仕込んでみたものの、ルールのゲーム寿命(ゲームに興味を惹ける時間)は極めて短く、10分ほどで飽きが来ると踏みました。
ですから、ゲームが最も美しいうちに終わるように、元々30歩あった各ステージを、10歩に縮めました。
しかし、結果的にはより大いなるボリュームを求める声が大半となりました。
これは、私自身の自作の強みへの評価が誤っていたと言わざるを得ません。このあたりも、ゲ制力のうちなのでしょう……。精進が必要です。
(なお、初版で想定プレイ時間30~60分と書いてしまっていたのは、私の見積もりがヘタクソすぎるせいで、「制作者が10分で終わるゲームなら、その5倍はかかる可能性がある」と間違って考えてしまったためです。)
いったん短い状態でお見せしてしまったゲームを、ボリュームアップするのは大変でした。ただ歩数を30歩に戻すだけだと、3倍ダレるゲーム、あるいは刺激が33%しかないゲームになるのは必定です。それではかえって期待を裏切ることになるでしょう。
数え切れないほどのUI改善や、大量のセリフ追加により、とにかく刺激を増やすことを目指し、現在の形となりました。
バージョンアップ終了は投票期間間際となってしまいましたが、ウディコンではプレイヤーの指摘を受けてのアップデートが習慣的ですから、私もその形に則り、形式上だけでも投票期間内にバージョンアップを行うことにしたわけです。評価への反映は期待できませんが、それでも何とか間に合ってよかったと思います。
送られてきた感想と点数への所感
自己評価は、バージョン1.02基準で
熱中7-斬新6-物語6-画像音声5-遊びやすさ3
でした。(自己投票は少し気恥ずかしくてできませんでした)
実際に届いたものは伏せますが、平均すると自己評価よりは高く出ていたようで、有り難い限りです。10点が一つでもつくとは思ってもみませんでした。また、v1.00の時点で膨大なダウンロードが来ていたにも関わらず、致命的なバグに言及した感想は予想外に少なかったため、皆バージョンアップを追ってくださっているんだなと感謝しました。
斬新さが高いのは狙い通りとして、画像音声点と遊びやすさ点も予想外に高く出ていました。画像音声は素材の力ですね。遊びやすさについては自分の意識していないところが評価されたということでしょう。
ただし、物語点の平均だけは相対的に低く出ており、高い点の方もいますが、「雰囲気しか感じられなかった」とか「物語性をほぼ排した作り」と感じた方もかなりいたようです。
これは、私の脳内にしか物語がなかった、あるいは短い文章で物語を感じさせるだけの技術が無かったということで、反省しています。筆力が足りていませんね。
しかしながら、これ以上文章を増やすと、ゲームへの没入感を疎外する恐れが大きいとも判断しています。そういう点では、物語性を排しているという評価も妥当なものでしょう。
また、ボリュームが少ないという感想に対し、熱中度を10近くまで上げる方と、2とか3まで下げる方に大きく分かれているのも特徴的でした。あるいは単純に、人を選ぶゲームだったということかもしれません。
最も明確な成功だと感じたのは点数ではなく、「ルールがわからない」という意見がほぼ全く見られないことです。「雪道」や「いばらのうみ」の一切何も語らないレベルデザインが好きなため、これをうまく模倣できたのは喜びの限りです。
総合して、自分の強み弱みと、自己評価との乖離が浮き彫りになったため、評価を受けてよかったと思いました。
心残り:もっと他作品プレイしたかった
自分が投稿した回ぐらいは、久々にウディコンの作品群と向き合おうと思っていました。最終的に22作品に投票できましたが、もっと大量の作品を見る予定だったのに、アップデートで期間の大半を潰してしまいました。残念でなりません。
おまけ:TRPGからの主人公コンバート
少しだけヒァナについても書き残しておこうと思います。
私はTRPGをよく遊んでいますから、新しく作るゲームの売りとしてキャラを押し出していくのは合理的な選択でした。初ゲ制という技術の保証が少ない中で、コンテストにとにかく自分の得意なジャンルをお出ししないのは損です。
また、私はボードゲーム「桜降る代に決闘を」のファンですので、Bakafire先生のデザインノートをしょっちゅう読んでいました。そこには、キャラ(メガミ)の造形つまりフレーバーと、そのキャラを選ぶ人が求めるデータ上のプレイ体験とを、一致させることの重要性がしばしば説かれていました。
ですから、私もプレイ体験からキャラを逆算してデザインすることにしてみました。ルールデザインは既に済んでしまっていたので、それに合わせて主人公を作ることにしたわけです。
この主人公は、四大属性のマナを駆使して、多種多様なスキルカードを使い分けて戦います。つまり天才です。さらに、エーテルの力にも手を出すことになります。
単純な攻撃魔法だけではなく、防御の「カウンター」や妨害の「フェイント」といった、ごちゃごちゃしたスキル群も平気で使い分けます。また、「腹式呼吸」や「チャージ集中」で敵のマナ収集を妨害してハメるような、搦め手の戦い方も選択できるわけです。
これは、器用で頭が良く、策略に長けた人物です。ときに豪快に、ときに繊細に。力押しもできますし、理屈に基づいた読みやコンボを行使する知恵も持ち合わせています。
頭がよくて、最強の魔法使いをプレイして頂きたい。
しかしながら、これはローグライクです。最強の魔法使いでも死にます。なんと受け入れがたい。
ですから、より良いのは成長途中だけどポテンシャルが最強の魔法使いが良いでしょう。
有名キャラでいうと、魔理沙とかは主人公適正高いですが、あれはパワーの使い手で、多属性を使うイメージはありません。どちらかというとアリス寄りのブレインな手段を取るわけです。
まそうさんとかもそれっぽいですね(まそうさんが主人公のスピンオフ、遊びたくないですか?でももうランス10の後で何か遊びたいという気にはならないわけで……)。
でももっと快活なキャラの方が遊んでて気持ちいい。
遠坂凛も天才で、五大属性をよく使えます。私は一時期、「やばい、これ遠坂凛から逃れられない」と思いました。美しく、誰からも好かれ、主人公気質を備え、万能の天才だがわずかに抜けていてミスをしても違和感がない。
ですが……より、技を必要以上にひけらかすタイプの方が、ゲーム性に合っていて好ましいと考えました。何せこのゲームには、30種類以上のスキルカードを実装するのです。
とにかく天才の目立ちたがりで、躊躇なく様々な手段を誇示するわけです。ですから、コンボやカウンターなどのテクニカルな手段を見せつけたり、自分の天才性をべらべらと喋ったりします。たぶん金髪でマントを羽織ってます。性別は男でも女でもありそうです。
こうなると、セリフをかなり入れた方がいいでしょう。直前にハイテンダンジョンRTAを遊んでいましたから、戦闘中だろうがおかまいなしに喋り続ける主人公がいいと思いました。
このままだと独り言拗らせた狂人になるので、話し相手が必要です。ハイテンダンジョンでは画面の外のプレイヤーに話してましたね。「最果てを目指す」では主人公のメカです。「妖精さんとダンジョン探索」とか「片道勇者」では相方が妖精でした。魔剣カオスとかもめっちゃ喋る
ん?
めっちゃ喋るキャラでインテリジェントウェポン持ち、過去に私TRPGでやってなかった?
Pathfinderのキャラで、魔法剣士のメイガスで、名前が「やかまシルフのヒァナ」!
じゃあプレイヤーが剣で、ヒァナが喋りまくればいいじゃん。
Pathfinderはダンジョンズ&ドラゴンズのヴァリアントで、あのゲームに出てくる魔法使いはとにかく多種多様な秘術を操ることで有名です。
また、剣と魔法を両方用いることで、前のめりな戦闘フレーバーを表現できます。
遠坂凛でも魔理沙でもまそうさんでもありません。
これは非常にぴったりの人選だと思われたため、そのまま採用となりました。
おまけ2:やかまシルフの開発で参考にしたもの
これは膨大にあるため、別の記事に起こそうと思います。
ここでは、一番参考になったものだけを貼っておきます。
(最新では1000発撃てるようです)
後書き
ここまで文を読んで頂き、ありがとうございます。
もし未プレイの方がいらっしゃいましたら、一度プレイしてみて頂けますと有り難いです。
制作にあたり参照したものの記事もそのうち上げるので、また読んでください。